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この話は一応6年生中心のギャグです。
若干、文伊になっていますので、
そういったものが苦手な方はご注意ください。




























「…」

「…くくっ」

「…ふふふ」

「ぶわははは〜」

文次郎を見るなり、同学年の5人は笑いだした。

伊作は遠慮がちに笑い、長次は大きい口を開けて不気味に笑い、仙蔵はお腹を抱えて失笑し、小平太と留三郎は遠慮無しに大笑いしていた。

「おまえらいいかんげんにしろ!」

「だって、だって文次郎の前髪が…!」と、小平太がひーひー笑いながら言った。

文次郎は敵との戦いで、飛んできた手裏剣を紙一重で避けたのだが、左の前髪だけ刈られてしまったのだ。

「人が負傷したっていうのに…」

「負傷って。前髪がなくなっただけじゃないか!」

「ったく、おまえらってヤツは…。もういい!疲れたから寝る!」

と、いつもギンギンの文次郎らしくない台詞を吐いて、ズカズカと部屋に入っていった。

「アイツ当分あのままなのかな?」

「それ困るよ!見るたびに笑っちゃう。」

と、留三郎と小平太が今だに笑いながら言った。

長次はやっと笑いが治まったが、仙蔵は、これは面白いとばかりに口元が笑っていた。

そんな中、伊作は少し心配そうな顔をしていた。


一時間くらい経った後、文次郎の部屋の扉を叩く音がした。

「なんだ?」と文次郎が聞くと、扉の外から、

「わたしだけど、少しいいかな?」と言う伊作の声がした。

「何の用だ?入るなら入れ。」と言われたので、伊作はそっと入った。

文次郎は扉に背を向けて、ふて寝していた。

「お前も、また笑いに来たのか?」

どうやら少し前に、留三郎と小平太が冷やかしに来たらしい。

「ち、違うよ!わたしは薬を持ってきたんだ!」

「薬?俺はどこも悪くないぞ?」文次郎は伊作の方を向きながら答えた。

「いや、実はね、髪が早く生える薬を調合してみたんだ。」

「髪が早く生える薬だと?そんなものがあるとは思えないが・・・。」

「それがあるんだよ!しかも効果はちゃんと実証済みさ!」と言って、伊作は薬の入った器を差し出した。

文次郎は、その器を、ものすごい疑いの眼差しで見た。

「うわぁ、すごい疑ってる!でも本当なんだってば〜。調合方法は書物にだって載ってるし、それにわたしの髪だって実際に早く生えて来たんだ!」

「本当か?」

「うん!本当だよ!まだ幼かった頃の話だけど。

わたしの家はお寺だから、父上がわたしの頭を坊主にしてしまってね。

それまでは長かったから、なんだかスースーするし、触ったらちくちくするし、なんかすっごく嫌で、半日くらい泣き続けたんだ。

そしたら父上がこの薬を作って、塗ってくれてね。で、なんと1週間もしないうちに肩くらいまで伸びたんだ!

だから、文次郎の前髪もすぐに元の長さに戻るよ!」と、満面の笑みで言った。

1週間で肩くらいまで伸びるなんて、益々怪しいと文次郎は思ったが、せっかくの伊作の好意なので、塗ってもらうことにした。

「目に入ったらしみるから、目つぶっててね!」

伊作なら薬をひっくり返して、本当に目に入りそうだと思い、文次郎は目をつぶった。

異様な臭いの薬を塗られ、しかもスースーして、余計はげたように感じた。

「よし!これで大丈夫だよ!でも、完全に生えるまで少し時間がかかるから、髪結いのタカ丸に相談してみたらどうかな?きっと上手く誤魔化してくれると思うよ!」

「そうだな。それはいいかもしれない・・・。他のやつらは、俺を見るたびに笑いそうだからな。」と、文次郎は想像しながら腹を立てた。

「それじゃ、わたしは部屋に戻るよ。」と言って、伊作は立ち上がった。

部屋を出ようとした時、「伊作、ありがとう。」と、少し恥ずかしそうに言った。

伊作もちょっと照れたように笑い、「へへっ。どういたしまして。」と言って部屋をあとにした。


終わり







あとがき

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
なんか中途半端な終わり方ですみません。
後日談として・・・
文次の髪は無事に生えてきたようです。しかも5日で元に戻ったとか。
伊作の薬おそるべし・・・。
ちなみに、小平太、食満、仙様は大変面白くないと残念がったようです(笑)



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